「卵巣刺激は痛そうで怖い。だからなるべく低刺激で痛くない不妊治療がしたい。」という意見は多いと思います。

実際、日本では自然周期(低刺激)採卵法を売りにする不妊治療クリニックが多くありますし、不妊治療改善を目指す政府が意見交流しているのはこういったクリニックが多いと思います。

自然周期とは、低刺激の採卵誘発により毎月厳選された1〜5個の卵子を採卵する方法で、一般的な中刺激や高刺激と違って何度も注射をする必要がなく、仕事で忙しい女性でも実施しやすいのが特徴だと言われています

しかし卵巣を刺激することに変わりありませんので、平常通りに仕事ができるわけではありません。たしかに注射の回数は減りますが不妊治療は女性にとってストレスがかかる治療であることは間違いありません。

おそらく「自然」「低刺激」というワードにより、不妊治療へのハードルを下げているものと思われます。

自然周期(低刺激)採卵法は一見、良さげに見える治療ですが世界標準の不妊治療は中刺激法や高刺激法です。

不妊治療の最大のメリットは採卵時に複数の卵子が取れることで効率的に不妊治療をおこなえることにあります。
卵巣をしっかり刺激して複数の卵子を採卵して不妊治療をおこなう。卵子が余れば凍結して次の治療に使用する。これが最もスタンダードな治療です。

OHSSが多発している日本の医療において、自然周期法で子宮に負担をかけずに不妊治療を行いたい気持ちは分かりますが、卵子と精子を受精させても受精卵になるのは半数程度です。4個採卵できても受精卵になるのは2個です。

頻繁に不妊治療を繰り返し、卵巣が疲れ切っている人に自然周期(低刺激)で治療をおこなうのは理解できますが、最初から選択する治療とは言えないのではないでしょうか。

日本が採卵一回あたりの出産率が世界でもっとも低い理由は、採卵ばかり繰り返し、確率の低い治療を繰り返していることが原因の一つなのではないでしょうか。