一般的な精液検査では、精液量、精子濃度、精子運動率、正常形態率を中心に焦点が当てられてきましたが、“精子機能(精子の質)”までは十分に判別できていない可能性がありました。そこで世界保健機関(WHO)ラボマニュアル第6版では、DFI検査とORP検査という精子の質を評価する項目が追加されました。
これにより精液所見は良いのになかなか妊娠に至らない場合や、胚の発育不良になっている原因がわかるかもしれません。どのような検査なのかを知ることで、今後の治療の参考にしてください。

酸化還元電位検査(ORP検査)とは

ORPとは、Oxidation Reduction Potentialの略です。

精子は酸化ストレスを受けやすい構造をしており、抗酸化機能も低く、酸化ストレスに対して脆弱な細胞です。

通常の精液検査では分からない精液中の酸化ストレスの強さを数値化して評価することができます。

酸素の一部が変化した「活性酸素」は、体内に侵入した細菌やウイルスの攻撃から体を守ってくれる大切な物質です。

通常であれば、不要な活性酸素を除去するシステムにより体内の「酸化」と「抗酸化」のバランスが適切に保たれていますが、過剰な活性酸素の生成、または抗酸化機能の低下により、バランスが酸化側に大きく傾いてしまう場合があります。

この状態が「酸化ストレス」状態です。

様々な細胞を傷つけてしまいます。そしてこの影響は、生殖細胞である卵子や精子にとっても例外ではないといえます。

精子DNA断片化指数検査(DFI検査)とは

DFIとは、DNA Fragment Indexの略です。
精子が酸化ストレスなどのダメージを受けることで精子のDNAが損傷することがあります。精子DNA断片化指数検査(DFI検査)を行うことで、DNA損傷のある精子の割合を調べることができます。

DFIが高い場合、受精率、胚発生率、妊娠率が低下したり、流産のリスクが上昇することが報告されています。
つまり精子の質が悪いことで、受精しにくくなったり、受精しても胚まで育ちにくかったりします。


またDFIは男性の不妊に関わらず、加齢に応じて増加することが知られているため男性も年齢が重要だといえます。 3106組のカップルにおけるメタ分析によると、DFIが高い場合には、妊娠率が81%に低下し、流産率が2.28倍に増加しています。
このように精子DNAの断片化は妊活において大きな影響を与えているといえます。

3)竹島徹平 他 ART治療成績向上のための男性不妊治療の役割. 不妊と不育の新たな課題 産婦人科の実際 66/13 2017年12月号 1839-1844.金原出版


4)Jan Tesarik et.al.Late, but not early, paternal effect on human embryo development is related to sperm DNA fragmentation Hum Reprod. 2004 Mar;19(3):611-5.

5)Zhao J et.al.Whether sperm deoxyribonucleic acid fragmentation has an effect on pregnancy and miscarriage after in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection: a systematic review and meta-analysis.Fertil Steril. 2014 Oct;102(4):998-1005.e8.

精子DNA断片化改善方法

精子DNAの断片化を改善する方法をいくつかご紹介します。

  • 禁煙
  • 高温での入浴を避ける
  • 長時間のサウナを避ける
  • 通気性の良い下着を使用する
  • 膝上でのパソコン操作をやめる
  • 過度な有酸素運動をやめる
  • 趣味の範囲で適度な運動をおこなう
  • 肥満を解消する
  • 睡眠不足を解消する
  • 抗酸化作用のあるサプリメントを服用する
  • 精索静脈瘤の手術
  • 長時間の自転車走行など会陰部への刺激を避ける
  • 2〜4日おきに射精する

DFI検査とORP検査はまだまだ一般的な検査とはいえません。
気になった方はお近くのクリニックにお問い合わせてみてください。