どんなに精子の質が悪くても精子が1匹でもいれば顕微授精で子供を授かる可能性がありますが、1匹も精子が見つからない場合は無精子症と診断されます。無精子症には以下の2種類があります。
① 閉塞性無精子症
② 非閉塞性無精子症
「① 閉塞性無精子症」は、精子の通り道が何らかの原因で閉じていることで射精した精液の中に精子が確認できない症状です。子供の頃に受けた尿道下裂や鼠径ヘルニア(脱腸)の手術が原因で閉塞性無精子症になることがあります。
有名人でいうとダイヤモンドユカイ氏の症状がこれにあたります。
「② 非閉塞性無精子症」は、先天性あるいは後天的な原因により、精巣で精子を作る能力が低下している症状です。染色体異常や遺伝子異常など先天的な原因もあれば、おたふく風邪がきっかけでムンプス精巣炎をおこして後天的に無精子になる方もいます。
閉塞性無精子症と違って物理的な障害ではないので、原因がわからないのも非閉塞性無精子症の特徴です。
また極めて精子が少ない「高度乏精子症」でも精子が見つからなかった場合は「無精子症」と診断されます。
芸人キンタローの旦那さん・小杉隆史氏の症状がこれに当たります。
いずれにしても精子が見つからなかった場合、手術で精巣にメスをいれて精巣内から直接精子を取り出し不妊治療に使用します。その精子採取術を「Micro-TESE」と言います。精巣内から取り出した精子は射精精子よりダメージを受けていないというメリットはあるものの、一度精巣にメスを入れると精巣内が癒着するので何度もできる手術ではありません。
女性の出産可能年齢が迫り、一日でも早く出産したいなかで非閉塞性無精子症が発覚した場合に「Micro-TESE」を実施したい気持ちもわかりますが、もし成功しなかった場合を考えると、まずは男性側が生活習慣を改善して、射精した精液の中から精子が見つかるように努力をするのがいいのではないでしょうか。
そして「Micro-TESE」でダメだった場合に子供を持つ選択肢は他人の精子をもらう「非配偶者間人工授精(AID)」か「特別養子縁組」となりますが、AIDについて今の日本では十分な法整備ができていません。
国内でAIDを行える病院は日本産婦人科学会の認定を受けた12箇所だけですが、法的な整備が不十分なため正規の精子ドナーが減ってきて、SNSなどアンダーグラウンドで精子提供者を探す動きがでてきています。非正規ドナーは学歴や国籍の詐称や感染症のリスクがあります。
子供が欲しくても正規ルートが難しいからアンダーグラウンドを頼るという好ましくない状況に対して法の整備が遅れています。
参考資料
→ micro TESEが必ずしも全ての非閉塞性無精子症にとってベストな術式ではない可能性あり
→ 精子提供、ネットで広がり 「子が欲しい」に法律は今
→ オススメTwitter @ドクターぬん
→ オススメTwitter @IWATSUKI, Shoichiro
→ オススメTwitter @おおたよしたか